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点滴ポール 生き抜くという旗印

点滴ポール 生き抜くという旗印

点滴ポール 生き抜くという旗印

 

先日、図書館で見つけて、“そうだ、読みたかったんだっけ”と借りてきた。
進行性筋ジストロフィーと共に生きる岩崎航さんの詩集。
そう、ほぼ日でこの本が紹介されていたのが、きっかけだった。

初めて読んだ時、その文章と詩を目で追って、涙が止まらなかった。
知らないうちに鼻水まで出て、嗚咽という状態。
えづくように泣くなんて久しぶりだ。

彼の境遇に同情したのかもしれない。
その言葉の力強さに衝撃を受けたのかもしれない。
勝手に出てきた涙なので、自分でも分からない。

2度目は、声に出して読む。
今度は涙が勝手に出てくることはなかった。

 

いくつかの詩を書き写す。
そして、巻頭のエッセイにあった文章に励まされる。

生きることは本来、うれしいことだ、たのしいことだ、こころ温かくつながっていくことだと、そう信じている。 

 先日読んだ、よしもとばななさんの『すばらしい日々』の中の文章を思い出した。
ばななさんが、生まれて初めて散歩する子犬の様子を見て感じたこと。

(略)楽しくて楽しくてしかたない、どうしてこんなに世の中っておもしろいの?なんでこんなにきれいだったり、どきどきするの?こんなに楽しいことがあるなんて、信じられない、なんで生まれてきたことってこんなに楽しいの?
 そう言っているとしか思えないくらいに、嬉しそうなのだ。
 なんだか尊敬の気持ちがわいてきた。 

 

『点滴ポール 生き抜くという旗印』は、写真もよい。
そして、装丁もすてきだ。
ブックデザインは「寄藤文平+鈴木千佳子」とあった。
レモンイエローの見返しと、赤い花切れ、巻頭詩の前の薄紙。
本文の紙の手触りもとてもよく、五行歌が美しく配置されている。

 

あぁ、詩っていいなぁ、とも思った本だった。